珍渦虫の正体と特徴・繁殖の仕方・紫色の靴下と呼ばれる理由
更新日:2020年08月28日
珍渦虫の正体と特徴
北ヨーロッパの海の底100メートルの泥の中に、顔がない謎の生き物が蠢いています。それは、珍渦虫と呼ばれる生物です。この生物を謎と知らしめてた理由として、生物に当然としてあるはずの脳みそや、繁殖のための生殖器を持っていないからです。それが、珍渦虫が謎の生物と言われる所以です。その珍渦虫の所以が世界中の生物学者の好奇心を掴んでいました。
珍渦虫がいる場所
珍渦虫が初めて発見されたのは1878年で、珍渦虫が報告されたのは1949年です。1949年に珍渦虫が報告された時に発見された場所はスウェーデン沖と言われ、この場所は唯一、珍渦虫が定期的に見つかる場所がスウェーデンの沖合の水深100メートルの、深くて寒くて、暗い場所です。
水深100メートルの海底をトロール漁、底引き網漁をすれば珍渦虫がすぐに見つかるとは言い難く、海底をさらって泥を濾してその残りから手作業で探し出します。一回の漁でも見つかる珍渦虫は数匹から数十匹ほどです。珍渦虫はスウェーデン沖以外にも、スカンディナビア半島の地中海である、バルト海にも生息していると言われています。
珍渦虫の大きさ
珍渦虫の大きさは幅が5㎜ほどで縦の長さが大体1㎝~3㎝で、4㎝はあるという情報もあります。取り合えず、目視はできるが小さいことには変わりないです。珍渦虫は長細い形をしていますが、厚みはなぺったんこの扁平で、左右対称の形をしています。
珍渦虫の形態
この小さな体の珍渦虫は生物としてかなりの変わり者です。なぜなら、生物として「ある」ものよりも「ない」ものの方が多いです。それは、脳がないです。生殖器がないです。中枢神経がないです。目がないです。骨がないです。肛門がないです。
珍渦虫は先に書いたもの以上に、我々が生物が持っているものがないです。その一方で、口とそれに続く腸があることは確認されています。珍渦虫は体の構造はかなりシンプルにできています。我々、人間から見ると、必要最低限の機能さえ珍渦虫には備わっていません。
珍渦虫には口はある
口があるということは珍渦虫は摂食活動を行うということです。しかし、肛門がありません。排泄物を出さないということでしょうか。食べたものは、全て消化してしまうのでしょうか。また、生殖器がないため繁殖行為ができません。
それにも関わらず、珍渦虫は繁殖しているという報告があります。この繁殖の仕方については明らかになったところもあり、後に詳しく説明をします。
珍渦虫とは、珍しい「渦虫」
珍渦虫が発見されたとき、この謎過ぎる生物をどこに分類するか学者たちは悩みました。古い論文によりますと、二枚貝の近縁の軟体動物ではないかと考えられていましたが、あまりにも体の構造が違うため、疑問がありました。一応、珍渦虫のDNAを調べ分類していくのですが、DNAサンプルの中に珍渦虫が食べた軟体動物の幼生が混入していたため二枚貝の仲間と思われたと言われています。
しかし、珍渦虫という名前からして、珍しい渦虫と考えられていたことがわかります。珍渦虫が発見された当初は、珍しい渦虫の仲間だと思われていました。よって、珍渦虫という名前が付けられました。
渦虫とは?
渦虫とは扁形動物門ウズムシ綱ウズムシ目ウズムシ亜目に属する動物の総称のことです。小難しい言い方ですが、生物上、最も再生能力にたけた生き物・プラナリアのことです。珍渦虫は一見すると、プラナリアのように見える左右相称動物だったため、プラナリアの仲間なのではないかと思われていました。
しかし、珍渦虫は渦虫と全く異なる生き物でした。しかし、珍渦虫には、扁形動物にあるはずの原始的な中枢神経がありません。先にも書きましたが、珍渦虫にはないもの尽くしの生き物です。感覚器官、運動器官、生殖器官。しかし、消化器官は腸だけはあります。
ウズムシ目とは三岐腸目ともいわれ、三岐腸とは腸が3つに分かれていることを意味しています。よって、渦虫の腸は3つに分かれています。珍渦虫は腸はあることは確認されていますが、渦虫と同じ分類に入れなかったところを見ると、珍渦虫の腸は3つには分かれてはいないのでしょう。
珍渦虫の正体
結局のところ、体の構造があまりにも簡素で、奇妙な珍渦虫は分類するのが困難でした。よって、動物門不明状態が続きました。よって、先にも書いたような二枚貝の近縁種だという論文や説が出てきては否定され、消えていきました。
中には、珍渦虫の個性的な体の構造。つまり簡素な構造の理由として、一度高度に発達したけれど、何らかの理由で二次的に退化したという説が出てきましたが、DNAの解析をしてみるとそうではないことがわかりました。
初回公開日:2017年12月11日
記載されている内容は2017年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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