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ソメイヨシノの寿命・植替え・添え木した場合の寿命の変化

更新日:2020年08月28日

近年、桜の名所地がピンチに陥っている、という話を聞いたことはありませんか?その話の根拠はソメイヨシノが寿命を迎えていることにあります。千年以上生きている桜もあるのに、ソメイヨシノの寿命はそんなにも短いのでしょうか。今回はソメイヨシノの寿命について紹介します。

ソメイヨシノの寿命・植替え・添え木した場合の寿命の変化

ソメイヨシノは自然繁殖が難しいため、接ぎ木で増やす方法がとられた桜です。適切な時期に正しい方法で行ったのなら、寿命に関しても問題ないのでは、と思われがちですが実はこんな問題があります。

接ぎ木とは増やしたい植物の一部を台木と呼ぶ植物体に挿し込み、融合させて苗木とする方法です。そしてソメイヨシノの台木には、マザクラ(アオハダザクラ)という品種の挿し苗が使用されることが多く、戦後全国各地に植栽されたソメイヨシノの台木も、ほとんどがマザクラの挿し苗だと言われています。

マザクラは成長が早く活着率も高いため、台木として使用されているのですが、病気に弱く寿命が短いという弱点があります。台木として使用されたマザクラも最初は根を張るのですが、やがて寿命を迎えて腐ってしまいます。そこから腐朽菌が繁殖してソメイヨシノの主幹を腐らせ、寿命を縮める原因となりました。

ソメイヨシノの寿命は短いのか

クローンであるため、ほとんどの株が同一の特性を持つソメイヨシノは、植樹された時期が同じならば、同じ時期に寿命を迎えます。また、病気や環境の悪化に負ける場合は、多くの株が同じような影響を受けてしまうという弱点もあります。

実際に21世紀に入ってからは、各地でソメイヨシノの樹勢の衰えが目立つようになりました。樹勢の衰えた木は枝の落下や倒木する場合があるため、安全面でも見過ごせません。現に2011年、東京都国立市で樹齢50年の桜が倒木して車2台を直撃する事故が発生しました。

そのため桜の名所として有名なところでも、傷んだ桜の診断や古木の伐採を行ったり、ソメイヨシノの代替品種・ジンダイアケボノへの植え替えを検討しています。

寿命60年説

一般には、ソメイヨシノの寿命は約60年と言われています。成長が早いソメイヨシノは樹勢が衰えるのも早く、樹齢40年ほどで衰え始めます。樹勢の衰えにより枝枯れなどが起き、腐朽菌が侵入しやすくなるので、さらに劣化が進みます。

そして50年を超える頃には幹の内部が腐ることから、「ソメイヨシノの寿命は約60年」という説が広まったと考えられるでしょう。

現在のソメイヨシノの多くは、戦後の復興期から東京オリンピックの時期にかけて植樹されたもの。この説に従えば寿命が尽きる時期にあたります。近年、桜の名所地が危機に陥っているという話が出てきているのはこのためです。

ですが、この寿命60年説を否定する声もあります。なぜかと言うと、60年以上生きているソメイヨシノの古木が現存しているからです。

日本最古のソメイヨシノ

現存する最古のソメイヨシノは、青森県弘前市の弘前公園にあります。1882年に植樹された、樹齢130年を越える老木です。長寿の秘訣はしっかりとした管理にあります。

青森県弘前市では、ソメイヨシノの樹勢回復のためにリンゴの剪定技術をソメイヨシノの剪定管理に応用したほか、殺虫剤の使い方や肥料の与え方、土の入れ替えなど、管理方法に色々な工夫を凝らしました。その結果、見事ソメイヨシノの樹勢回復に成功。現在も市の職員が1本1本丁寧に管理しています。

弘前市のソメイヨシノの話から、きちんと適切な管理をすれば、ソメイヨシノの寿命は延ばせるということが分かります。寿命60年説というのは、何も対策を取らなかった場合の話と取るほうが良いでしょう。

とは言え、ソメイヨシノが桜の中では短命な品種というのは否定できません。ここで比較のために他の桜の寿命を見ていきましょう。

ヤマザクラの寿命

ヤマザクラは日本の野生の桜の代表的な品種です。和歌にも多く詠まれており、ソメイヨシノが広まる前は、桜と言えばヤマザクラのことを指していました。

ヤマザクラの寿命は約200年から300年と言われています。「日本五大桜」の1つで、国内最古のヤマザクラとされている静岡県富士宮市の『狩宿(かりやど)の下馬桜』に至っては樹齢800年という驚異的な長寿で、国の特別天然記念物に指定されています。

エドヒガンの寿命

エドヒガン(江戸彼岸)はヤマザクラと同じく桜の野生種です。彼岸頃に花を咲かせることが名前の由来になっています。

エドヒガンは桜の中でも最も長命な品種で、平均寿命は500年以上とされています。1000年以上生きている古木も存在しており、日本最古の桜と呼ばれている山梨県北杜市の『山高神代桜(やまたかじんだいざくら)』は、樹齢1800年とも2000年とも言われている老木です。「日本三大桜」の1つに数えられています。

ちなみにこの「日本三大桜」の残る2つは、岐阜県本巣市の『淡墨桜(うすずみざくら)』と福島県三春町の『三春滝桜(みはるたきざくら)』。『淡墨桜』は樹齢1500年以上のエドヒガンです。『三春滝桜』はベニシダレザクラ(紅枝垂桜)というエドヒガンの変種で、樹齢は1000年以上と言われています。

愛情と地道な努力がソメイヨシノの寿命を延ばす

ソメイヨシノの寿命については、病気に弱いところやクローン植物ゆえの弱点もありますが、大気汚染などの環境の変化による影響も見過ごせません。

また、花見をするのは良いのですが、桜の根元を踏むと根が傷んでしまいますし、飲み物やソース類などを零すと木が吸収して弱ってしまう原因となります。ゴミの不法投棄は土を汚染し、やはり桜の寿命を縮めることに繋がってしまいます。

美しい花を楽しむためにも、1人1人が気を付ける必要があります。

そして弘前市のソメイヨシノの古木が証明したように、適切な管理を続けていけば、短命と言われているソメイヨシノでも100年以上生きることができます。いつまでも元気で、美しい花を咲かせて欲しいと願う愛情と地道な努力が、ソメイヨシノの延命を可能にしたと言えるでしょう。

初回公開日:2018年01月22日

記載されている内容は2018年01月22日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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