「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」の由来・なぜコウノトリか
更新日:2020年07月24日
キリスト教前のゲルマン人が持っていた信仰に基づく神話の総称であるゲルマン神話では「人が死んだ時、魂は天に昇り、雨と共に降りて沼地に溜まる」という考え方がありました。その沼地に溜まった魂を、女神ホレが誕生する赤ちゃんに吹き込むことで、赤ちゃんに魂が宿ると考えられていたそうです。
「シュバシコウ」は、水辺で食べ物を探していることがあります。その姿が「沼地に溜まる魂を女神のもとに運ぶ」ことに連想され、「シュバシコウ」=「赤ちゃんに宿る魂を運ぶ鳥」になったとされます。赤ちゃんに魂を吹き込むのは女神ホレですが、その前に沼地から魂を運んでくる役割を「シュバシコウ」がしている。ということです。
コウノトリになったのは勘違い?
夫婦と「シュバシコウ」のお話が日本に伝わる時、なぜか「シュバシコウ」の部分が「コウノトリ」に置き換わりました。正確な理由は定かではありませんが、「勘違い」とか「コウノトリの方が馴染みがあるから」などの説があります。
「勘違い」の説がある理由は、「シュバシコウ」と「コウノトリ」がよく似ているからです。この鳥たちは両者ともコウノトリ目コウノトリ科で、一見はよく似ています。しかしながら、よくよく見てみると、「コウノトリ」のクチバシは黒っぽく「シュバシコウ」のクチバシは赤色をしています。
コウノトリの方がイメージしやすいから?
続いて、「コウノトリの方が馴染みがあるから」説についてです。そもそも「シュバシコウ」は日本で見かける鳥ではなく、どんな鳥なのかも想像しにくいことから、外見がよく似ている上に日本で見かける「コウノトリ」を「シュバシコウ」の置き換えとした。ということから、考えられている説です。
日本人は国民性として真面目だと言われているため、「シュバシコウ」と伝わった言葉を「コウノトリ」と勘違いすることは考えられないという意見もあります。
そのことも考慮すると、「シュバシコウ」は日本では馴染みがなくてイメージにしくいから、よく似ている「コウノトリ」に置き換えよう。ということになったのではいかと考えることが、「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」となった理由としては納得です。
赤ちゃんはどこからやって来るのか?
「シュバシコウ」に持たれていた「沼地から女神ホレに魂を運ぶ」という連想からすると、「沼地」からやって来ることになります。日本で沼地と言えば悪いイメージをされがちですが、かつてのゲルマン族の中では「沼地」=「死から生になる象徴の場所」であったため、そのように考えれば神秘的な印象になります。
ゲルマン神話によれば、魂は沼地の前に「天」にいます。つまり、死した魂がまずは天に昇り、雨と共に沼地に降りた時には「次の生になる準備が整っている状態」ということです。仏教で言う輪廻転生のようですが、煩悩が付き纏う輪廻とは違い、単純に「魂は何も無いところから生まれるのではない」イメージが強い印象です。
どうして「赤ちゃん」と言うの?
「赤ちゃん」という名称は、「生まれたばかりの時に皮膚が赤黒く見えること」に由来しています。生まれたばかりの人の皮膚は薄いため、体内の血管が透けて見えやすい状態にあります。そのことが原因で、皮膚が赤〜赤黒に見えます。時間の経過と共に赤みは引いてきますが、人によっては頰などに赤みが残る場合もあります。
また、「赤」という言葉には「純粋な・穢れない・明らかな」などの意味もあります。言葉の意味としても、新生児を「赤ちゃん」という名称で呼ぶことは合っていると言えます。「生まれたばかりの時に皮膚が赤黒く見える」説が有力な由来だと言われていますが、言葉の意味的にも問題がないため、現代に至るまで新生児を「赤ちゃん」と呼ぶことが一般的になっています。
赤ちゃんを運ぶコウノトリが象徴するもの・意味とは?
「赤ちゃんを運ぶ鳥」は、日本では「コウノトリ」、ヨーロッパ圏(特にゲルマン神話)では「シュバシコウ」でした。では、これらの鳥類が象徴していることは何でしょうか。大切な赤ちゃんを運んで来てくれる鳥なので、どのような象徴として扱われているのかを確認しておきましょう。
シュバシコウ
「シュバシコウ」が「幸せを呼ぶ鳥」と呼ばれることは、これまでにお伝えしました。春になって渡ってきた際に家の屋根に巣を作りますが、害虫を食べてくれるため、人にとっては有益なことになります。特別な害となるわけでもなく、むしろ害虫を食べてくれるため、人と共存する鳥として「幸せを呼ぶ鳥」と言われています。
コウノトリ
「コウノトリ」は「幸せ・幸運の象徴」であり、「親子愛の象徴」とも言われています。特にヨーロッパ圏では「幸運の象徴」として有名で、「コウノトリ」が巣作りをして暮らしてる家には落雷などから守られるという言い伝えがあります。
アルザス地域圏というフランス北東部にある地域では、「コウノトリ」が愛されています。お土産品として「コウノトリ」のぬいぐるみなどを見かけることもあるほどで、アルザスのシンボル的な鳥となっています。アルザスは自然豊かな地域で、観光地として訪れる人も多いそうです。
「親子愛の象徴」としているのは、おそらく日本だけでしょう。「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」という迷信に、由来しているのだと考えられます。鳴かない鳥であり、そのシュッとした細身な姿が特徴的ですが、日本でもヨーロッパ圏でも、良き鳥とされています。
「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」には純粋な由来があった!
初回公開日:2018年02月04日
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