味噌汁は沸騰させても良いのか・沸騰させた時の乳酸菌・温度
更新日:2020年08月28日
味噌汁は沸騰させてもいいの?
家庭科の授業や家で夕食を作る手伝いをしたときなどに、「味噌汁は沸騰させてはいけない」と教わったことがある人は多いはずです。確かに、グラグラと煮え立った味噌汁は、適温のものと比べて味が変わりますが、はたして本当に味噌汁は沸騰させてはいけないものなのでしょうか。
味噌汁は沸騰させない方がいい
結論からいうと、味噌汁を沸騰させるのはよくありません。
なぜなら味噌汁は、沸騰すると味も香りも落ちてしまうからです。また、かき混ぜずに沸騰させると危険な状態に陥る可能性もあります。
具体的には、味噌汁を沸騰させることでどのようなデメリットがあるのでしょうか。
味噌汁が爆発するって本当?
一昔前に、味噌汁を沸騰させると爆発するといった内容がメディアでよく紹介されていました。これは正確には爆発ではなく、突沸という現象を指します。
突沸とは、沸点を超えた状態で静かに熱を加えられ続けていた液体が、少しの刺激で爆発的に沸騰する現象のことです。味噌汁の場合は、ステンレスの鍋でほとんど具がない味噌汁をかき混ぜずに熱し続けると、まれにこの突沸が起こることがあります。
ですが、本当のところ、よほどのことがない限り味噌汁は爆発(突沸)しません。それでも、沸騰させようとするとそのリスクは高まりますから、安全面を考慮すると、味噌汁の沸騰は避けるべきです。
味噌汁が爆発する可能性をできるだけ低くしたい場合は、ステンレス製でない鍋を用いたり、ある程度具だくさんの味噌汁にしたり、こまめにかき混ぜまがら温めたりするなどの方法があります。
沸騰するとまずくなる
味噌の独特の香りは、熟成段階で糖などから変化したアルコールが発しているものだということをご存知でしょうか。
お酒を沸騰させてアルコールをとばすという調理方法があるように、味噌に含まれるアルコールも、味噌汁となったときに沸騰するととんでしまいます。その結果、味噌の香りが格段に落ちてしまうことになります。
また、味噌汁を沸騰させると、香りだけではなく味も落ちてしまいます。それは、味噌汁を長く火にかけることで、味噌に含まれる米や大豆などの粒が分離して、口に含んだときにザラザラとした食感がするようになってしまうためです。
要するに、味噌汁を沸騰させると、香りの元であるアルコールがとび、味噌が分離して口あたりも悪くなってしまうということになります。味噌本来の風味を楽しめる味噌汁の適温は、煮立つ直前の75℃とされています。
乳酸菌や酵素の減少
味噌は発酵食品のため、乳酸菌や酵素を豊富に含んでいます。味噌汁を飲むことでそれらを効率よく摂取できたら、身体にとって喜ばしいことです。
しかし、乳酸菌や酵素は熱に弱いため、味噌汁を沸騰させてしまったら確実に激減します。
特に酵素は、乳酸菌以上に熱に対する耐性がありません。そのため、酵素を生かしたまま身体に取り入れるには、味噌汁の具だけをだしで先に煮込んでお椀によそい、食べる直前に味噌を溶き入れるのがです。
発酵食品というと無条件に身体にいいのでは思いがちですが、きちんとした調理方法をとらなければ、せっかくの菌や酵素が台なしになってしまいます。味噌汁の場合、発酵食品としての利点を生かすためには沸騰させるのはご法度です。
栄養
味噌汁を沸騰させると酵素が失われるため、もちろん栄養価も下がります。
味噌には、原料がもつ本来的な栄養素のほかに、発酵によって生まれるさまざまな有効成分が含まれています。具体的にはタンパク質やカリウム、イソフラボンなど、味噌に含まれる栄養素は多岐にわたります。
タンパク質は発酵によってアミノ酸に分解され、肝機能の働きを助けます。お酒や煙草を嗜む人に味噌汁がいいとされるのは、このためです。また、味噌には中性脂肪やコレステロール値を下げる効果のある栄養素も含まれており、健康食としての力は計り知れません。
味噌汁を沸騰させることで、酵素だけでなくこれらの栄養素も摂取が難しくなるため、全体的に栄養価が低くなってしまうのは否めません。
味噌汁が沸騰したときの乳酸菌との関係
味噌に含まれる植物性乳酸菌は熱に強い!?
味噌は乳酸菌の宝庫です。しかしすでに述べたように、乳酸菌はとても熱に弱く、60℃以上で加熱するとどんどん死滅していきます。
ところが、実は味噌に含まれている乳酸菌は植物性乳酸菌といって、動物性乳酸菌に比べると熱に強いとされています。100℃ほどで加熱しても、熱によって死ぬことはありません。
それでも確実に乳酸菌を鍋の中で生かしておくためには、やはり沸騰させるのではなく、煮え端(にえばな)と呼ばれる味噌汁の適温を守る方がよいでしょう。酵素ごと生かしたいという場合は、煮え端よりもさらに低めの温度で味噌を溶き入れるのが得策です。
味噌汁を沸騰させないためには
初回公開日:2018年02月09日
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