刀の手入れ方法・手入れに必要な道具・手入れの頻度
更新日:2020年08月28日
油は刀身の錆を防止するために塗るもので、丁子油(ちょうじあぶら)と呼ばれています。油塗紙は刀身に油を塗る時に使うもので、拭い紙やネルなどの布を適当な大きさに切って使います。
拭い紙(ぬぐいがみ)や布
拭い紙は、良質の奉書をよく揉んで軟らかくして、砂気やごみなどを十分に除去したものを使います。油取りのための下拭(したぬぐ)い用と打粉取りのための上拭(あげぬぐ)い用の2種類があります。布の場合はネルを使います。よく水洗いして糊気をとって、乾かしてから使います。
刀の手入れの際に口に紙を咥えている理由は?
時代劇などで刀の手入れをするシーンでは、たいてい口に紙を咥えて真剣な表情で作法のように行なわれます。紙を口に咥えるのは、刀身に息を吹きかけないようにするためと言われています。手入れの時に刀を持ったままお喋りをすると、唾液が飛んで、その手入れを怠るとその部分が錆を発生させるもとになってしまいます。
そのようなことを防ぐために口に紙を咥えると言いますが、本来はお手入れに限らず、武士の魂のこもった刀身を前にしては喋らない、口を開かない戒めの意味としての刀剣拝見の正式な作法とされていることです。
懐紙とは
この刀の手入れのときに口に咥える紙は「懐紙(かいし、ふところがみ)」と言われるものです。懐紙は「陸奥紙(みちのくがみ)」とか「壇紙(だんし)」と呼ばれる高級和紙で、懐紙を常備していることは武士のたしなみでもあったようです。今でも茶道の席や会席料理などの改まった席などで用いられています。
刀の手入れのときに拭い紙のように、この懐紙で刀を拭うという話もありますが、拭い紙と懐紙とでは素材がまったく異なります。懐紙で刀を拭うと刀身に傷をつける原因になってしまいます。
便利な刀の手入れセットも
刀の手入れ道具をセットにした便利なものもネット通販などで販売されています。桐の箱に入ったものや、携帯用のバッグに入ったものなど、数千円の手ごろな価格のものが多いようです。通販のサイトには3点セットや5点セットの他、単品扱いや、お手入れ以外の日本刀関連グッズもあって楽しめます。本物の日本刀だけでなく、模造刀の手入れにも需要があるようです。
手入れの順序と方法は?
柄を外して拭いまで
刀を手入れするにはまず、柄(つか)から刀身を外します。目釘抜で目釘を抜き、柄を外すのですが、外すのにはコツがあって刃先など危険な部分に十分な注意が必要です。
柄から刀身を外してから、鎺(はばき)と呼ばれる鞘(さや)のなかで刀身を安定させるための金具を木槌などで軽くたたいて外します。外出用の拵(こしらえ)付きの場合は、その前に切羽(せっぱ)や鐔(つば)を外しておきます。
刀身に何も付いていない状態で拭いを行ないます。拭い紙で古い油や汚れを下から上へと静かに拭って取り除きます。もし油がとれないような場合は、脱脂綿かガーゼにベンジンか無水アルコールをつけて同様の方法で拭います。それから改めて拭い紙で拭います。
ポンポンと打粉を
油と汚れを拭ったら、刀の表を下から峰のほうへ打粉でポンポンと軽くたたいて、次に裏を返して逆に峰から下のほうに同じように打粉をかけます。この打粉は拭いでは取り除けなかった油分を打ち粉にしみこませるためのものです。
次に拭い紙で拭いと同様な方法で打粉を拭いとります。一度できれいにならなかったら、更に打粉をかけ、拭いを繰り返します。
油を塗り鞘に納めるまで
古い油や汚れが落ちたことを確認して、次に油を塗ります。油塗紙に新しい油をつけて拭いと同様な方法でていねいに油を塗ります。ムラがないように2、3回繰り返すと良いでしょう。薄くムラなく、平らに塗ることが肝心です。この油は錆の発生を防止するためのものです。
それから、鎺(はばき)や切羽(せっぱ)、鐔(つば)など手入れのために外した金具などを付けて柄に納め、目釘を打って鞘に入れます。これで一連の手入れの完了ですが、何と言っても危険な刃物ですので怪我をしないように十分に注意してください。
初回公開日:2017年09月25日
記載されている内容は2017年09月25日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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